灰のなかの歌 ――普賢岳に寄せて
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/09/17 19:59:41
そこにひとつの崩壊(ほうかい)があつた
有明の海をわたつてくる風のなかに
白くただ凍えてゐる山が
おまへの去つたあとのやうに 美しく燃えてゐた私はつめたい光のなかに立ち
あかるい灰の降る空をただ見上げてゐる
オルフェの竪琴(たごと)のやうに
私の心は ただ激しく震へてゐたおまへはもう忘れてしまつたの...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
そこにひとつの崩壊(ほうかい)があつた
有明の海をわたつてくる風のなかに
白くただ凍えてゐる山が
おまへの去つたあとのやうに 美しく燃えてゐた私はつめたい光のなかに立ち
あかるい灰の降る空をただ見上げてゐる
オルフェの竪琴(たごと)のやうに
私の心は ただ激しく震へてゐたおまへはもう忘れてしまつたの...
そこには青い冷たい翳(かげ)があつた
有明の海をわたつてくる風のなかに
ひとつの山が しづかに濡れてゐた
すでに失はれた 遠いふるさとのやうに私は灰色の光のなかに立ち
雲のゆききをただ見上げてゐる
ちひさな窓から吹きこむ風のやうに
私の心は かすかに震へてゐたおまへは知つてゐるだらうか
あの険しい嶺...
第三部:星降る夜の果てに夜の静寂(しじま)が すべての未練を包み込み
竹林はただ 黒い巨大な波となる
私はどこまで 歩けばよいのだろう
私の足跡は 夜露がすべて洗ってしまった遠ざかる故郷(ふるさと)は もう見えない
溢れる涙の向こうに かすむばかり
去っていく私は ひとつの透明な幻灯
だれの記憶から...
第二部:日暮れの惑いあんなに優しかった パステルの夕映えが
竹の節々に 赤い涙をこぼしている
去り行く私の背中を そっと炙りながら
追憶の痛みを 鮮やかに呼び覚ますなぜ私は ここを離れねばならぬのか
問うてみても 風はただ通りすぎるだけ
引き裂かれた心の ひとつの破片(かけら)が
この林の土に 深く...
第一部:朝霧の出立朝の霧が 竹林の奥へ流れるとき
私は静かに なじんだ道を歩みだす
露に濡れた笹の葉が そっと囁き
引き留めるような手を 引き絞るようにもう一度だけ ふり返るべきだろうか
いいえ 光はすでに東の空に淡く
私の古い名前を 消し去ろうとしている
ただ一言の「さようなら」さえ残さずに胸の奥...
|
|