錆びついた鉄骨が、夜風に吹かれて低く軋む
かつて子供たちの歓声で満ちていた場所は
今や、月光だけが静かに降り積もる記憶の墓場だ
俺は一人、塗装のはげたベンチに腰を下ろす足元で、破れたチケットの切れ端が風に舞った
あいつとここで、未来なんて不確かなものを語り合った
メリーゴーランドの木馬たちは、動くあ...
錆びついた鉄骨が、夜風に吹かれて低く軋む
かつて子供たちの歓声で満ちていた場所は
今や、月光だけが静かに降り積もる記憶の墓場だ
俺は一人、塗装のはげたベンチに腰を下ろす足元で、破れたチケットの切れ端が風に舞った
あいつとここで、未来なんて不確かなものを語り合った
メリーゴーランドの木馬たちは、動くあ...
台風が去った後の埠頭は、ひどく静かだった
ちぎれた雲の隙間から、冷たい月光が零れ落ちる
海面は黒いインクのように凝固し
錆びついたボラードが、誰かの墓標のように佇んでいたコートの襟を立て、煙草に火をつける
紫煙は月明かりに溶け、すぐに消えた
ここにはもう、誰もいない
あいつが残した、かすかな香水の残...
外は暴風雨、世界が引き裂かれる夜
停電の闇の中、机の隅でそいつが這いつくばっている
埃を被った真空管、傷だらけのプラスチック
指先でダイヤルを回せば、骨董品がかすかに震えたザー、ザー、と砂嵐の音が部屋に満ちる
台風の咆哮に負けじと、奴は必死に声を絞り出す
途切れ途切れに流れてきたのは
いつかどこかで...
窓を叩きつける硝子(ガラス)の雨
街灯がひとつ、水たまりに溶ける
バーボンを煽り、煙草(タバコ)に火をつけば
くたびれたブルースが、俺の背中を撫でた奴は静かに、しかし確実にやってきた
風は軋(きし)み、夜の輪郭を削り取っていく
外では台風が、すべてを吹き飛ばそうと牙を剥く
だが、俺の心は微塵(みじん...
一
青いあざみの 咲く径(みち)を
おまへとふたり 歩いた日
木漏れ日はただ やさしくて
僕らの影を ひとつに揺らしたあなたの髪の かすかなにほひ
忘れたくない こゑのひびき
たとえ季節が すぎてゆくとも
この高原の 風は消えない二
しづかな夜の しづくのなかに
おまへのなみだを 僕は見た
何も言は...