木魚の音に合わせて
書類を綴じる僧の手
朱印は祈りの印鑑
帳簿は経巻のように積まれ
コピー機は経机の隣で
白紙を光に変え
FAXは鐘の余韻を運び
メールは線香の煙に溶ける
寺務とは
静けさの中に響く事務
事務とは
俗世の中に潜...
木魚の音に合わせて
書類を綴じる僧の手
朱印は祈りの印鑑
帳簿は経巻のように積まれ
コピー機は経机の隣で
白紙を光に変え
FAXは鐘の余韻を運び
メールは線香の煙に溶ける
寺務とは
静けさの中に響く事務
事務とは
俗世の中に潜...
気づいたら朝だ。
昨日と同じ天井、同じ部屋。
夢の中で世界を救ったはずなのに、
現実では布団すら救えなかった。 でもまあ、いいか。
冷めきったコーヒーをすすりながら、
「今日も頑張るぞ」なんて、
自分に言い聞かせてみる。 誰かが見てるわけじゃない。
けれど、見ててほしい気もする。
少...
夜になると、ときどき、心のどこかで音がする。
小さなクリック音のような、静かな断絶。
感情のスイッチが切れる瞬間だ。 怒りも、喜びも、笑い声も、
全部、電源コードを抜かれたみたいに静まる。
世界が少し遠くに下がって、僕だけが残される。
街の灯りがゆっくりと滲んで、空気の温度が曖昧になる。 ...
雲に隠れた月の代わりに、
街灯がやけに張り切って光っている。
誰もがスマホを空にかざす夜、
僕だけは画面の通知を見つめていた。 君の既読は、
薄雲の向こうでかすむ星のようだ。
届かない光ほど、
勝手に意味を持たせてしまう。 窓ガラスに映るのは月ではなく、
冷えたカップと僕の顔。
それ...
香りは、記憶の論理を裏切る
触れていないのに 肌が反応し
見ていないのに 欲が芽吹く
それは 理性の盲点に咲く
知性の隙間を縫う 微細な誘惑
いやらしさとは 露骨ではなく
知覚の奥に潜む 構造の歪み
あなたの香は 思考を撹乱する
哲学の言葉では 定義できない
それでも わた...