Nicotto Town



【小説】橋の下の家 6


 橋の下に人影が見えて、私はたまらない気持ちになった。 ここに来れば何かが変わる。 変わる筈だ。きっと─── 近づくにつれ、その人影が彼のものではないことに気が付いた。 彼女だった。 私の足音に振り返った彼女は、夏の夜から比べて更に線が細くなっていた。彼女は弱々しく微笑んで、またお酒を買いに行かれ...

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【小説】橋の下の家 5


 眠れぬ夜が続いた。 あの後、私は言葉を失ったまま立ち上がり、家に戻った。それから暫く、あの橋の下へ行く気にはなれなかった。 朝の冷え込みは体に厳しかった。畑に出ても何もしないに等しい。嫁は私を気遣ってか、孫を私に任せ、家に居るようにと言った。孫の世話で一日が終わる。眠れずに起き出してこっそりと啜...

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【小説】橋の下の家 4


 それから十日程、私は床に臥していた。夜露に濡れて呑んでいたのが災いしたのだろう。身体中がぎしぎしと軋むように痛んだ。寝たり起きたりを繰り返しているうちに、私はこのまま、ある朝突然、二度と起き上がれなくなるのではないかと思った。 まるでこれまでの生活を取り上げられるように─── 彼の言葉が、ふいに...

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頑固の血筋はどこから


昨日のランチはだなPと二人でフレンチレストランで。初めて行くお店だったんだけど、すごく美味しかったです。だなPが法事の時にどうかとピックアップしていた店の一つで雰囲気もいいし、お店の人に訊いてみたら法事もOKだったしお寺からちょっと離れてるけどいいなと思いました。
で…向かう車中でだ...

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【小説】橋の下の家 3


 その後の数日を、私はあの祭りの夜の余韻に浸って過ごした。 結局、彼女には何も尋ねることができなかった。彼にも同じであった。私もまた、何も尋ねられることはなかった。私達はただ、草の盃でゆっくりと酒を呑み、彼の吹く草笛の音に耳を傾けていた。冷たい川風が心地よくそよぎ、花火が終わり静寂が訪れる頃、落ち...

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