Nicotto Town



緑の底で息をやめる

白い喉が、
まるで刃物のように、夜の静けさを裂いていた。 その一瞬、時間は止まり、
世界の中心がふたりの皮膚の接点へと、ぎゅっと縮んだ。 布の下で、汗ばむ肉がわずかに震える。
それは羞恥ではなく、悦びでもなく、
ただ、意識が肉体に屈服する音だった。 指先は、ふれるのではない。
侵入するでも...

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《雨はまだ降っている》

雨粒のひとつひとつが
彼女の名前を知っているような気がした。傘をさしていても
頬は濡れる。
それが涙かどうか、わからないままで。部屋に戻ると
椅子がひとつ足りない。
カップは二つあるのに、
テーブルが広すぎる。光がカーテン越しに差し込んで
彼女の不在だけを照らしている。私はその場所を
...

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「封を叩く音」

・・・・・


指の折れる音

誰かの声が届くたび、私はその音の輪郭を銀の解剖刀でなぞるようにして受け取る。
あまりに柔らかく、あまりに近く、その熱は、血ではなく毒のように肌の裏側を這ってくる。
そして私は知っている。
ふれるより先に、身を引いた方が美しいということを。 人の眼差しが花であるなら、それは咲いた瞬間に腐臭を孕む...

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触れたあとに、光が残った

風がテーブルを撫でるたび、
そこに君の手のぬくもりが
ふいに戻ってくる気がした。
あの日、ふと触れた瞬間の体温が
時間を越えて、
今もこの部屋に棲んでいる。 涙が出そうになるのは、
たぶん哀しいからじゃない。
まだ名前のついていない感情が、
心の奥で静かに膨らんでいるだけ。 ほら、君...

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