お蕙ちゃんは「あたしお引っ越しはうれしいけど遠くへいけばもう遊びにこられないからつまらないわ」とやるせなさそうにいう。
で、私もどうしようかと思うほど情けなくなって二人してふさいでいた。
これがお別れだといってその晩はみんないっしょに遊んだが乳母もさすがに「ほんとうにおふしあわせなお子さ...
愛と平和を
お蕙ちゃんは「あたしお引っ越しはうれしいけど遠くへいけばもう遊びにこられないからつまらないわ」とやるせなさそうにいう。
で、私もどうしようかと思うほど情けなくなって二人してふさいでいた。
これがお別れだといってその晩はみんないっしょに遊んだが乳母もさすがに「ほんとうにおふしあわせなお子さ...
何分かして、黒い修道服を身にまとった、背の高い修道士が現れた。
彼はぼくを見てにこやかな笑顔になった。
額の広いその顔は、ほとんど白髪のない栗色の小さな巻き毛に縁取られており、同じように栗色の髭がペンダントのように垂れ下がっていた。
彼はどう見ても五十以上ではないだろうとぼくは推測...
あんたに話したいことがあるの、と佐知子がいった。
なんだ、と僕はいった。
「あんたがどう思ってもいいわ。本当は静雄は明日、この部屋をでるつもりだったのよ。それを今夜、あんたにいうつもりだったの」
「静雄がでて行くのはあいつの勝手だよ」
「聞いて。海できめたの」
「話さな...
ね、ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。
長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。
運命がわたしたちにくだす試みを、辛抱づよく、じっとこらえて行きましょうね。
今のうちも、やがて年をとってからも、片時も休まずに、人のため...