「車の窓から腕を出しているのがはっきりと分かるね。」
慎一郎は冷静に分析していた。
「慎ちゃん。だけど、腕が出ているだけじゃない。何で、腕なんか出したのよ。」
「決まっているだろう。酔っ払いを橋から突き落としたんだよ。ちょっと触っただけでも、よろよろと歩いていたら、運河の橋なんて、欄干も低いから、...
「車の窓から腕を出しているのがはっきりと分かるね。」
慎一郎は冷静に分析していた。
「慎ちゃん。だけど、腕が出ているだけじゃない。何で、腕なんか出したのよ。」
「決まっているだろう。酔っ払いを橋から突き落としたんだよ。ちょっと触っただけでも、よろよろと歩いていたら、運河の橋なんて、欄干も低いから、...
由梨花は考える顔をしていたが、複雑な思考に耐えかねた。
「交通事故による当て逃げ事件じゃないの。」
この意見に伯母も頷いた。
「この画像から、車が男を跳ねたということが証明されますか。車は男の前で急停車をしている。もし、当て逃げだったら、スピードを落とさないだろう。警察の発表によれば、溺死体には...
女二人に慎一郎の三人で投稿ビデオの画像点検が始まった。菅原はルポライターを志すと決めた時、文章と映像をセットで整えることが必須と考えて、仕事を素早く仕上げるためにも画像修正ソフトを事前にパソコンに入れていた。
ダイニングキッチンから応接間に移動すると画素数の精密な大型ディスプレイに大学生の宮田雄...
私服の由梨花は美しく輝いていた。慎一郎はなるべく冷静に眺めようと思った。気持ち的に引き締めておかないと、この女はいきなり抱き着いてくるかもしれないという警戒心が先だった。
「今日は急いで出ていったわね。これコーヒー代のおつり。」
こう言って、由梨花は小銭の入った封筒を慎一郎に渡した。
「ありがと...
今日は1日中晴らしい。
要するに洗濯日和なので、我が家の干し場は満杯なり。たぶん、夕方には全部乾くだろう。定年後の男の役割というのが全国的に定着してきている。それは朝食を夫が作ること。ゴミ出しはすること。洗った洗濯物を干し、取り入れること。こうしたことを奥様より引き継いでいる。その他、犬の散...
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