雨の巫歌
雨がぽつりと 降りはじめて
みんな傘を開く
空に向けて ぽんと開く
人の世の花よ
かなしみにあふれた この大地に
空の人は嘆く
ささやかでも潤そうと
...
雨の巫歌
雨がぽつりと 降りはじめて
みんな傘を開く
空に向けて ぽんと開く
人の世の花よ
かなしみにあふれた この大地に
空の人は嘆く
ささやかでも潤そうと
...
シルビアは何となくセイジがお母さんの話になると表情がくもること、どこか遠い目になることがわかった。くもった表情を打ち消すように、「ぼくのお母さんは歌手なんだ。シャンソンという歌を歌ってる。日本の歌も歌うよ」と星史は明るく言った。「シャンソン? 知っているわよ! 心を歌っている歌よね。ちょっと派手な...
第二章 アプリコットの野
「ローズ・フローラの歌」
美しくやわらかい薔薇の花の雨を、星史たち三人はしばらく受けていた。薔薇の花びらが一枚、テーブルの上のカップに落ちていく。ローズ・フローラはやさしく微笑んで、両手を胸にあてた。「消えてしまっても、あの人の思いは消えない」と精霊の言葉でぽつりと言っ...
星史とシルビアは、黙ったままローズ・フローラの次の言葉を待っていた。「森を削ったら、そこに生きていた木々を殺すのよ。木々だけでなく、草や虫、鳥たちも……。木々は空気をきれいにしたり、酸素を作ってくれているのにね。魚の住めない湖、川で家をなくした魚たち、川の流れは速かったり...
第二章 アプリコットの野
「薔薇の花の雨」
小高い岩からふわりと花びらが舞い散るようにスカートを広げて、ローズ・フローラは星史たちの前に舞い降りた。「人間に殺されたって……」と星史は、何か心に沈んでいくものを感じながらつぶやいた。「そうよ、殺されたの。あなた人間でしょう?...