おそれ
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/12/05 19:12:12
いけない いけない
静かにしているこの水に手を触れてはいけない
まして石を投げ込んではいけない
一滴の水の微頭も
無益な千万の波動を費やすのだ
水の静けさを貴んで
静寂の値を量らなければいけない
貴女はその先を私に話してはいけない
貴女の今言おうとしている事は世の中の最大危険の一つだ
口から外へ出さなければいい
出せば即ち雷火である
貴女は女だ 男のようだといわれてもやはり女だ
あの蒼黒い空に汗ばんでいる円い月だ
世界を夢に導き 刹那を永遠に置き換えようとする月だ
それでいい それでいい
その夢を現に返し
永遠を刹那にふり戻してはいけない
この澄み切った水の中へ
そんな危ないものを投げ込んではいけない
私の心の静寂は血で買った宝である
貴女には判り様がない血を犠牲にした宝である
この静寂は私の命であり
この静寂はわたしの神である
しかも気難しい神である
夏の夜の食欲にさえも
尚 烈しい擾乱を惹き起こすのである
貴女はその一点に手をふれようとするのか
いけない いけない
貴女は静寂の価を量らなければいけない
その一個の石の起こす波動は
貴女を襲って 貴女をその渦中に巻き込むかもしれない
百 千倍の打撃を貴女に与えるかもしれない
貴女は女だ
これに堪えられるだけの力を作らなければいけない
それが出来ようか
貴女はその先を話してはいけない
いけない いけない
御覧なさい
煤煙と油染みの停車場も
今はこの月と少し暑苦しい靄のとの中に
何か偉大な美を包んでいる宝蔵のようにみえるではないか
あの青と赤のシグナルの明かりは
無言と送り目との間に絶大な役目を果たし
はるかに月夜の情調に歌を合わせている
私は今 何かに囲まれている
ある雰囲気に
ある不思議な調節を司る無形な力に
そして最も貴重な平衡を得ている
私の魂は永遠を思い
私の肉眼は万物に無限の価値を見る
静かに 静かに
私は今ある力に絶えず触れながら
言葉を忘れている
いけない いけない
静かにしているこの水に手を触れてはいけない
まして石を投げ込んではいけない
(高村光太郎 「おそれ」)
読みにくい、意味が通りにくい言葉は、現代語訳しておきました。
それなりに読みやすくなっていると思います
こんなすごい詩は書けませんよw高村光太郎は、「あどけない話」が超有名ですが、他にも素晴らしい詩を残してます。
結局、成る様にしか成りませんが、足掻いてみるとそれなりの修正はできたようです。
ダメだっていわれるとやりたがる人いますよねw
そんな面白いところも持ち合わせていたんですね。
まだ読みにくいよねwでも読んでくれてありがとう。
でも、恭介さんのことばとして聞いていました。
わたしは、「起居事無く、惟安んじる所に適う」でいいと思う。
それでも、巻き込まれるときには巻き込まれるし、火がついちゃえば燃えちゃうし。。
ん。全然的外れなコメントだった?んーー。それはそれ、これはこれということで^^;
ダッシュ;:*:;゚:*☆ ヘ(* - -)ノ☆*パッ*★*
[壁]д=)ジィ
ありがとう♪