星を盗む男 (下)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/12/01 21:33:14
「おい本当か? とんでもない金になりそうなのか?」
男は、身を乗り出して聞いて来た。
本当に、自分の欲望にストレートな奴だ。
俺は、それには答えず。
「そこにあるイーゼルを担いで来てくれ」
それだけ、言うと絵を抱えて歩き出した。
秋とはいえ、海はすぐそこ、夜の港は少し肌寒かった。
遠くに、街の明かりはわずかに見えるが、倉庫街のこの辺りは、真っ暗だった。
果てしなく広がる漆黒。その濃い黒を縫って、ライトの光は蛇のようにうねっていた。
「このへんで、いいだろう」
男にイーゼルを置くように促した。
そこに絵を立てかける。
男はイラつくように語気を荒げて聞いてきた
「そろそろ、教えてくれてもいいんじゃないか?ローゼンファイルはどこだい?」
俺は、懐から懐中時計を取り出し時間を確認した。
再び、懐中時計をしまうと、胸ポケットから少しくしゃくしゃになった煙草を男の前に差し出した。
「吸っとけ」
「あいにく禁煙中なんだ、俺を肺ガンにしたいのか?」
思わず、噴出してしまった。肺ガンなんて気にする顔じゃない。
「そんなタマかよ」
俺の言葉を聞くと、男は観念して一本煙草を箱から取り出し咥えた。
男の煙草に火をつけてやると、俺は自分でも一服やり始めた。
闇夜に、赤い光点が二つ静かに揺らめいていた。
二人とも無言のまま、時は流れた。
「なあそろそろ…」
そんな男の台詞を制し、煙草の火で上を示した。
辺りが暗い為か、空気が澄んでいるからか、都市部とは比較にならないほどの星が瞬いていた。
男は不思議そうに空を見上げていると、星が一つ流れた。
「ひとつ流れたな」
男は呆れたように、言った。
「これだけ、星があるんだ。ひとつぐらいこぼれるさ」
その台詞を言い終わった後だったか、先だったか良くは覚えていない。
とにかく、その時、全天に星が流れ始めた。
男は、驚いたように訊ねてきた。
「これは、一体??」
「これがローゼンファイルの正体。流星嵐さ」
口をあんぐりと開け、呆然と空を眺めている男の耳にそっと囁いた。
「これだけあるんだ、ひとつくらい持って帰るかい?泥棒さん」
少しの沈黙のあと男は言った。
「やめとくは、安アパートの床が抜ける」
2人して、星のシャワーを浴びていると、男は至極もっともな質問を浴びせてきた。
「しかしなんだってこんなものを?」
「さあね、でももしかしたら…。叶うと思ったんじゃないか?」
「何の話だ?」
「昔から言うだろう、流れ星に願いを託すと叶うって」
「ああ」
「これだけ流れれば、盲目の少女の星を見たいって願いが叶うんじゃないか?」
「?」
「この流星嵐は300年周期なんだろう、極大の時間は僅かだ、その時が都合よく夜だとは限らない。恐らくハンナの見た流星嵐は昼間だったのさ。天文にも精通したローズ博士は、それを知った上で青空を見上げさせた」
「人類はあれから成長したのかねぇ?」
「そうだな、酒と煙草の味がわかる程度には、なったんじゃないか?」
それきり会話は途切れた。
2人して口をあんぐりとあけながら天体ショーを眺めていたからだ。
盲目の少女と一緒に…。
再び男が口を開いた。
「確かにこれだけあれば、願いのひとつくらいは叶いそうだな」
「案外ロマンチストなんだな、どんな願いだい?」
「そうだな冷えるし、ウィスキーで1杯やって体を温めたいね。…もっともあの金があれば、一杯なんてケチくさいことは言わないんだがね。ホントこの星空の星みたな数の札束だったよなあ~」
ロマンの欠片もないようなセリフを
男は、子供みたいに空に向かって叫んでいた。
俺は男の目の前で、札をひとつ振って見せた。
「あれだけあれば、ひとつこぼれることもある…だろ」
男は笑いながらぼそりと言った。
「ノーチェイサー?」
俺も、クスリと笑いながら答える
「ああ、ノーチェイサー」
2人は、お互いの肩を叩きあいながら、星降る闇に消えていった。
おまけのほうに、解説しています。そこを読めばきっとわかるはず。
そこはオチというかおまけなんですけどね・・・。
…意味がわからず…_| ̄|○
大事なオチがわからず…(Θ_Θ;)
肺ガンは、おそらく、乱入男のお茶目なとこなんでしょうねw
微妙に、すこし変な表現が入るのが好きみたいです。そういえば「ただ月のみが果てない2人の愛を見ていた」でも ちぢれ麺とか入れて一部不評をかってましたw
星空はいいですよね~特に冬場はすごくいいです。早口に自信があれば願い事するんですけどねw
あああー失礼しました^^ぺこり
私は、夜空を眺めることが大好きなんです。流れ星に願いを 欲張りません一つでいいから願い叶えて
欲しなって 思います。恭介さんも、星に願いを されましたか?
「星を見上げる少女」には、メッセージが隠されていました。それは魔鏡という仕組みで、隠されており、特定の波長の光を当てると、文字や絵を反射させるというものです。
主に、隠れキリシタンが聖母像を隠したりしたやり方です。主人公の刀の鍔にも同様の、からくりが施されています。それゆえに気付いたのでしょう。
メッセージは、今日の日付と「願わくば、ハンナに光を」とだけ書かれていたようです。
読んでくれて、ありがとうございました。
願い・・・。ロマンも何もないですが白ガチャの目玉が欲しいですね。現在確率5%・・。
わからなかったので質問です。
流星嵐は盲目の少女の絵を置くことによって見えたもの?
それともその日その場所で見えることに気づいて
持って行ったっていうことなのかな?
流星を見ることができるのは夜だけじゃないんだよね。
昼間は私たちにははっきりと見ることができないから
星は夜に見えるものという認識があるのだけれど
盲目の少女には昼も夜も関係ないもんね。
ハンナにはきっと青空の中で流星が見えていたんだな~と思いました。
札束をひとつくすねていたのには拍手です^^
星に願いを、かけたのですね。
恭介さんも、何か願い事をするのですか?
ロマンティックはお好きですか?ありがとうございました。
次の流星群はふたご座ですね。しろいろ調べてみるといいかも
流星嵐ってほどの規模となると、なかなかありませんからね。
次はふたご座流星群、極大は12月17日あたりだとおもいます。
きちんと感想ですよ~。流れ星に願いをってすごくロマンティックですよね。
サラ姉もなんか願い事ある??
楽しんでいただけたようで、幸いです。
またがんばって書きますから、読んでくださいね
依頼どうりのモノにはなりませんでしたが、いいものになったでしょうか?
次は、木夢さんが、何か書いてくれたら嬉しいです。
そうですね。太陽の光がつよいだけで、昼間も星はあります。
それに気付ける人になったら、モテテしょうがないとおもいますよw
今時、流行らないとはおもいますが、なんとなくらしさはだせたかな?
次作もこんな感じにしようかな。
ギミックは結構、いい感じに仕上がった気がします。
男ばっかりで、少々時代になじまない気がしますけどねw
星空のロマンスは、好きですか?
ノーチェイサーわかりにくかったかもしれませんね。
ホントに、お気に入りなんですねw乱入男。
次の話、プロットだけは上がってます。 ↑コイツがメインの話です。
ほんとは勢い余っていくつか書いちゃってますw
お読みいただき、ありがとうございました。
新作は、あるかもしれません。ハードボイルドかどうかは不明です。
結末がロマンチックでいいです
ステキなお話、ありがとうございました
それにしても、澄み切った満点の星空に大量に流れる流星、
一度見てみたいもんです。
流れ星にネガイゴトかぁ・・・ロマンチストだね♪
でも、ホントだったら良いのになぁなんて思っちゃうょ~☆.。.:*・゜
ってこれ感想???(;´▽`A``スマヌー
拝読させて頂き、ありがとうございました((´∀`*)/
目に見えないだけで。
見えないものにもちゃんと気付けるようになりたい。
そして、男2人と盲目の少女とが、、、
ノーチェイサーの意味がわかってよかったです。
そして私はやっぱり謎の男が好きです(笑)
子供みたいに叫ぶって、ロマンの欠片も無いどころか、逆にロマンが溢れててイイわぁ~
この主人公が登場するお話は、続編みたいなのが有るのかしら?
それともこの短編のみなのかな。
まだまだ読んでみたいです!!
とってもお洒落でロマンチックな結末に・・・(*´∇`*)
素敵なお話ありがとうございましたー☆
また新作もあるのかな?楽しみにしてま~す♪