10月1日では遅すぎる
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/11/07 08:35:45
「10月1日では遅すぎる」昨夜、読了。
ネタバレ含むので読みたくない人はスルーで。
物語は太陽から指向性を持った輻射線が途方もない量で放出されていることが判明し、それが地球に様々な変調をきたしているらしい…というところから始まる。
主人公ディックは(著名な作曲家でありピアニスト)、親友である数学者ジョンとその解明の旅に巻き込まれることになる。
ディックは現代音楽のイベントに自身の新作を演奏する予定だったが、直前に現代音楽とは真逆の純粋な情念に満ちたクラシック曲を何かにとりつかれたように作曲し現代音楽への反逆と受け取られるかもと危惧しながらもそれを披露する。彼は現代音楽を否定はしないが、感情をぶつけない音楽はエンジンの積まれていない自動車のようだという持論を心の奥で持っていた。
太陽の異常のせいか世界各地からの通信に異常が起こったり、停止したりし始めた。詳細を確認するために国をあげての大規模な調査が始まる。その中にジョン(世界的数学者)のサポーターという名目でディックも参加。一部欧州では1917年の戦争状態であり中東などではガラス質になった「無」の大地があるばかり。そして、ギリシャではアテネとスパルタの戦の最中だった。
世界が異なる時間軸でモザイクのように存在するように変質してしまった。そして、ディックは同行した学者たちと離れ、ディオニソスの神殿付近に居を構えて苦労して運んだピアノで憑かれたように作曲に励む。ギリシャ人は彼を狂人と噂した。ある日、ディックはアポロンの神殿付近から現れた女性に音楽対決を申し込まれる。当時の美しいが素朴な楽器の音色とピアノでは勝負にならないのではと思えたが、どういう音響の仕組みなのかその音楽は圧倒的な技巧と存在感を持ちディックを感動させた。ディックも全身全霊を込めて自作曲を含め壮大なピアノ音楽を披露し結果は引き分けとなった。
アポロンの神殿で出会った女性は実は未来人だった。彼女に導かれてディックは未来人たちが住む地区に。そこで、ジョンとも再会。その世界は500万人ほどの未来人が労働から解放され全てAIが管理する社会だった。未来人の予想ではこの世界は全てガラス質の一切の生命が存在できない場所になり我々は滅ぶ運命だという。ジョンは1966年のイギリスに戻り、ディックはこの未来社会にとどまった。
そして、世界は唐突に元に戻った。モザイク状の時間のずれは消失して現代(物語上の1966年)になった。なぜ、この事件が起こったのかは謎のまま。超知性が見せた警告? ディックはこの地球の生命が滅びの運命にあるとは信じない。テクノロジーが進んでも結局、袋小路で停滞し人類は滅びを静かに受け止める未来と違う未来を信じる。
感想としては、太陽の変異が何らかの存在によるものなのか曖昧なのが気になった。ひょっとすると人類以外の何物かがこれまでの地球の歴史とあり得る未来を地球人に見せたのかもしれない。目的は人類が滅びを避ける方法を自らが探して実践するため?主人公のディックが繰り返し、情熱の伴わない音楽について不満を述べていることはその滅びを回避する一つの要素なのかもしれない。























