Nicotto Town ニコッとタウン

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うさ頭巾(完結)


美しい女だ…ウサギ族か、白いドレスを翻してこちらにやってくる。
胸元には青く光るものが!「青い薔薇」だ!
グレゴール公が窓に駆け寄る。
女と目が合った。
下瞼を引っ張って、舌を出している。
「捕まえられるなら捕まえてごらん!」

頭に血が上ったグレゴール公が窓から飛び降りて追いかける。
しかし大熊猫族のグレゴール公の脚はとうていウサギ族のスピードには敵わない。

アンリエットは挑発するように、わざと走りを止めグレゴール伯が近づくのを待ってからまた走り出す。
裏庭の白鳥の池に通じる水路があった。
アンリエットはその水路を難なく飛び越え、足元に注意を払う余裕もなかったグレゴール伯は水路に転げ落ちた。
その時、近くでオオカミの遠吠えが聞こえた。

黒い燕尾服に白い手袋。銀色の仮面をつけたブラッドが立っていた。
手には先ほどの鑑定士の変装に使った灰色の毛皮のマスクを持っている。

水路の中で尻もちをついているグレゴール伯にブラッドが話しかける。
「オレはオオカミの血が濃いほうでね。2~3キロ離れた仲間を遠吠えで呼び寄せることも出来るんだ。仲間には少し乱暴な奴もいるから興奮させたら怪我じゃ済まないだろうな」

「そしてこれは、オレの親父が託したあんたの不正を暴いた書類だよ。脱税をでっち上げて、ある貴族から財産を奪った証拠。これを使ってあんたを失脚させることは簡単だ」

「そうか、あの男、息子に書類を託していたのか…取引しないか?金なら…」
水路から立ち上がろうとするグレゴール公をブラッドがうなり声で威嚇する。怯んだグレゴール公に強烈なパンチを一発くらわせる。

「ブラッド…」アンリエットが声をかける。
「…行こう、仕事は終わりだ」ブラッドが気絶したグレゴール公を後ろにアンリエットの手をとり急ぎ足で歩く。
「ブラッド、オオカミの友人って…」
「ああ、あれは嘘だ。そんな芸当はできない」

ほどなくして、王宮の警備隊が駆けつけた。
長い夜だった。

夜明け前。
王宮から離れた公園で、あたしとブラッドは並んで座っていた。
公爵の悪事は明るみに出るだろう。
「君に返しておくよ」ブラッドが青い薔薇をあたしに手渡す。
鑑定士になりすまして、偽物と信じ込ませた青い薔薇は確かにアンリエットの家から奪われたものだった。グレゴール公が窓からアンリエット(うさ頭巾)を見つけた時にブラッドがポケットに忍ばせたのだ。

「結局、青い妖精の正体は謎のままってことね」
「ああ、ブローチの台座にでも秘密があるんじゃないかと思ったけどね。空振りだった」
「そのライト、鑑定用だっけ?ちょっと貸して」
「直接目に当てたら危ないぞ、気をつけて」「わかった」
ライトの光がブラッドの胸元を照らした一瞬、青い光が揺らめいた。

「ブラッド、ちょっと服を脱いで!」
「…大胆だなあ」
「馬鹿ね!ここを見て!」
革紐には琥珀の指輪が通してあり、ブラッドのシャツの内側で揺れていた。
その琥珀がライトを受けて青く光る。青い琥珀の中に小さな翅が浮いている。
「これって…青い妖精にも見えない?」
「…この指輪は親父の形見なんだ。もしかしたら、奪われることを恐れた君の父上がオレの親父に託したものかもしれないな」

「君にひとつ、頼みがある」
「なによ。今度は何を盗めっていうの?」

ブラッドは笑った。
「俺の相棒になってくれないか」
あたしは腕を組んだ。

「報酬は?」
「フィフティフィフティと言いたいところだけど、君が決めてくれて構わない」
「…あたしは今の仕事をわりと気に入ってるのよ」
「続けてくれて構わない」
「パートタイムの探偵?」
「…そして叱咤激励係かな」
「それと……」

突然ブラッドがわたしを抱きしめた。
耳の付け根に彼の息を感じる。
オオカミの耳にわたしの心臓の音が鳴り響いていないといいけれど。

ブラッドは、しばらく何も言わず抱きしめていた。
あたしはどうして、振りほどけないんだろう…。

彼が何かつぶやいた。
「なに?」

「…ダメだな。また危険な仕事に君を巻き込むなんて、今のはなし。忘れてくれ」彼はあたしの両肩に手を置いて体を離した。

あたしは彼を見つめた。
琥珀色の瞳は、悪戯っぽさを消していた。

そして、彼は跪いてあたしの手の甲にそっと口づけた。
「おやすみ、アンリエット ああ、もう朝だけど」

「ちょっと待ちなさいよ!」
あたしは立ち去ろうとする彼の服の裾をつかんだ。
「勝手に頼んでおいて、勝手に取り消すって何なの?あたしの返事を聞きもしないで何様?」
「!」

彼は振り返った。
「依頼内容を変更する。相棒じゃなくて妻になってほしい」
「……!」
ブラッドは革紐から指輪を外し、わたしの薬指に。
「……求婚するなら、もっとこう、言い方ってものがあるじゃない…」
「…ダメかな?」
「受け取ってあげる。もともと家のだし」
ブラッドが笑う。
あたしも、ほんの少しだけ笑ってしまった。

ウサギ族とオオカミ族なんて、最悪の相性だよね。
絶対に。

……でも、だからこそ退屈はしないかもね。
そして…月の光を集めたような金色の瞳にウサギは弱いのよ。

#日記広場:自作小説

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2026/10/26 08:58
きゃΣ(ノ∀`*)素敵なラスト。




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