風の中で ――普賢岳に寄せて
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/09/17 19:57:12
そこには青い冷たい翳(かげ)があつた
有明の海をわたつてくる風のなかに
ひとつの山が しづかに濡れてゐた
すでに失はれた 遠いふるさとのやうに
有明の海をわたつてくる風のなかに
ひとつの山が しづかに濡れてゐた
すでに失はれた 遠いふるさとのやうに
私は灰色の光のなかに立ち
雲のゆききをただ見上げてゐる
ちひさな窓から吹きこむ風のやうに
私の心は かすかに震へてゐた
雲のゆききをただ見上げてゐる
ちひさな窓から吹きこむ風のやうに
私の心は かすかに震へてゐた
おまへは知つてゐるだらうか
あの険しい嶺(みね)が湛(たた)へる寂しさを
あはく消えゆく夕ばえのうつろひを
あの険しい嶺(みね)が湛(たた)へる寂しさを
あはく消えゆく夕ばえのうつろひを
けふも私のなかで風がうたふ
もう戻れぬ異郷の その山なみに向かつて
ちぎれる雲のやうに ただ独り
もう戻れぬ異郷の その山なみに向かつて
ちぎれる雲のやうに ただ独り

























