Nicotto Town ニコッとタウン

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秋麗の風によせて


だれを待つともなく 古い宿場の軒端(のきば)に
秋のひかりは ただ哀しくたまつてゐる
かつてあれほど賑やかだつた つめたい石畳を
いまは寂しい風だけが ひとりで吹きすぎてゆく
遠い山の手のひそやかな伽藍(がらん)から
おそい夕暮れの晩鐘が ひとつ、またひとつと響いてくる
それは消えゆくもののやうに ひろごる影のなかへ
あの日と変わらぬ うつろな時の音を運んでゐる
――秋が かうして 静かにかへつて来た
置き去りにされた 古い道標(みちしるべ)に寄り添ふやうに
透きとほる風のなかに 私はこぼれる涙を拭ふ
すべてはうつろひ 二度と戻らない日々の
しかし確かななごりを この胸に深く抱いて
私はただ 暮れなづむ高原の寂暮をきいてゐる

#日記広場:小説/詩




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