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日見峠の霧


優しくひとつの朝がひらかれるとき
僕は見失う、僕の歩むべき細い道を。
日見峠の古い坂に立ちこめる霧は、
まるで誰かのささやきのように淡く、白い。
消え去った旅人たちの足跡を隠し、
みどりの木の葉を濡らす、しめやかな涙。
追憶のなかでだけ鳴りひびく馬鈴の音が、
このぼんやりとした景色のどこかに、眠っている。
あねもねの風が僕の頬をかすめ、
失われた季節のうたを、低く歌う。
すべては淡い記憶の底へ沈んでゆくのだろうか。
霧の向こうに、まだ見ぬ海があるとしても、
僕はただ、この一瞬のなつかしい孤独のなかに、
そっと眼を閉じて、佇んでいたい。

#日記広場:小説/詩




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