悲しきサーカスの残り香
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/08/15 04:28:56
それは一つの小さな夢のあと
草の原にのこされた 黄いろい輪と
すこしのあいだ空に揺れてゐた 音楽の音――
誰もゐない 五月の午後の微風(そよふ)きのなかで
草の原にのこされた 黄いろい輪と
すこしのあいだ空に揺れてゐた 音楽の音――
誰もゐない 五月の午後の微風(そよふ)きのなかで
天幕(てんまく)はもう どこかへたためられて去り
旗も とほうもない遠くの空へ消えた
けれど そこにはまだ おもかげが漂ってゐる
おしろいと すこし焦げた麦藁(むぎわら)の匂いとが
旗も とほうもない遠くの空へ消えた
けれど そこにはまだ おもかげが漂ってゐる
おしろいと すこし焦げた麦藁(むぎわら)の匂いとが
あゝ あの夜 小さな木の椅子のうえで
少女は空を飛ぶ鳥のやうに身を投げた
そして観衆のどよめきの隙間に
永遠(とわ)のよろこびと 小さなかなしみをみた
少女は空を飛ぶ鳥のやうに身を投げた
そして観衆のどよめきの隙間に
永遠(とわ)のよろこびと 小さなかなしみをみた
風よ お前はなぜ いつまでもそこを離れず
まはつてゐるのか その古びた足あとのまはりを?
わたくしはただ 過ぎ去ったものたちのために
こころのなかに 静かなランプをともす
まはつてゐるのか その古びた足あとのまはりを?
わたくしはただ 過ぎ去ったものたちのために
こころのなかに 静かなランプをともす
もうすぐ陽が沈む 草の葉は露に濡れ
はるかな町で 夕暮れの鐘が鳴るだらう
さうして誰もいなかつた野べの記憶は
ただ美しく あたらしく 遠ざかつてゆく
はるかな町で 夕暮れの鐘が鳴るだらう
さうして誰もいなかつた野べの記憶は
ただ美しく あたらしく 遠ざかつてゆく

























