悲しきサーカスの残り香――雨の朝に
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/08/15 04:27:27
あした 目ざめれば 窓のそとは
しづかな細い雨が すべてを濡らしてゐた
あんなに賑やかだつた 幻のやうな場所も
いまはただ 蘆(あし)のやうに青く沈んで
しづかな細い雨が すべてを濡らしてゐた
あんなに賑やかだつた 幻のやうな場所も
いまはただ 蘆(あし)のやうに青く沈んで
草の原にのこされた 昨日の足あとは
水たまりの底で そつとぼやけてゆく
おしろいの匂いも 少女の軽い靴音も
みんな つめたい土のなかに吸はれて
水たまりの底で そつとぼやけてゆく
おしろいの匂いも 少女の軽い靴音も
みんな つめたい土のなかに吸はれて
あゝ わたくしは覚えている
あの小さな天幕の 破れたすきまから
一瞬だけこぼれた 星のやうなひかりを
それは雨のなかの いまはもう見えない夢
あの小さな天幕の 破れたすきまから
一瞬だけこぼれた 星のやうなひかりを
それは雨のなかの いまはもう見えない夢
風はもう うたふのをやめて
ひとすじの煙のやうに ひくく這ひまはり
わたくしの心は 濡れた葉柳のやうに
ただ黙つて その消えゆくものをみつめる
ひとすじの煙のやうに ひくく這ひまはり
わたくしの心は 濡れた葉柳のやうに
ただ黙つて その消えゆくものをみつめる
すべては去つたのだ あたらしく
雨のなかに すべては美しく溶け去つた
ただ一つの かなしい残り香さえ
かすかな朝の ひかりに変へながら
雨のなかに すべては美しく溶け去つた
ただ一つの かなしい残り香さえ
かすかな朝の ひかりに変へながら

























