Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



遠いアカデミー・ドゥ・ラ・グランド・ショミエール


木炭のこなの あわく舞う部屋に
ひとすじの光が 古い画架(イーゼル)を照らし
僕はただ 見知らぬモデルの輪郭を
白い素描紙のなかに そっと閉じ込めようとする
ここには かつて夢を追った異邦人たちの
かすかな吐息が いまでも壁に眠っている
きみが削っていた パステルのやわらかな青が
僕の指先を いつまでも冷たく染めて
窓のそとには モンパルナスの並木路
もうだれも 僕の素描をのぞきこみはしないのに
僕はノートの余白に 小さな窓の絵をかいて
あのなつかしい人の 名前をひとつつぶやいてみる 
さようなら 木炭の匂うアトリエの午後よ
傾くひかりは 僕の孤独の影をながくのばし
カルチェラタンの夕日が 街を染めあげるころ
僕は一枚の素描を抱き 静かに扉をおそう

#日記広場:小説/詩




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.