虚蝉(うつせみ)によせて
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/08/11 08:25:10
そして 僕は また かへつて來る
あの灼けた夏の午後の 影のなかに
おまへは そこに かたちをのこして
光る風のなかで じつと だまつてゐる
あの灼けた夏の午後の 影のなかに
おまへは そこに かたちをのこして
光る風のなかで じつと だまつてゐる
かつて 歌は ここを通りすぎ
すきとほる羽音が 空の青さに吸はれた
いまは もう だれも問ふものもない
草の茎のうえの ひそやかな抜け殻よ
すきとほる羽音が 空の青さに吸はれた
いまは もう だれも問ふものもない
草の茎のうえの ひそやかな抜け殻よ
おまへは ひとつの季節を生き、そして
すべてを擲(なげう)って ここに留まった
あたたかい血のめぐりも 遠い夢も
あともなく脱ぎすてて 澄んだ銀の殻よ
すべてを擲(なげう)って ここに留まった
あたたかい血のめぐりも 遠い夢も
あともなく脱ぎすてて 澄んだ銀の殻よ
僕は おまへに問ふすべを知らない
ただ 指先で そっとふれてみるだけだ
なつかしい過去(むかし)の ひかりが
冷たい空気に ほのかに反射(かへ)るだけだ
ただ 指先で そっとふれてみるだけだ
なつかしい過去(むかし)の ひかりが
冷たい空気に ほのかに反射(かへ)るだけだ
風よ! 語れ、あの日のことを
美しく過ぎにし ものたちの足音を
僕は まどろみのなかで 聞いてゐる
おまへのすきとほる背中に あおぐ空の青を
美しく過ぎにし ものたちの足音を
僕は まどろみのなかで 聞いてゐる
おまへのすきとほる背中に あおぐ空の青を

























