Nicotto Town ニコッとタウン

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雨の降る遠い町で――虚蝉に


はるかな町に 雨がしづかに降つてゐる
瓦のやうに灰色の 見知らぬ屋根たちの下
僕はひとりで 古い窓から外を眺め
おまへののこした うすい殻を手のひらに載せてゐる
あの夏の日 光のなかで啼きしきつたおまへの
小さなうたは いまはどこへ行つてしまつたか
この濡れた舗石(しきいし)のうえを 流れる水のやうに
すべては遠くの川へ 消え去つてしまつたのか
窓硝子(まどガラス)には 冷たい滴がいくつも走り
おまへの羽のやうに かすかに光を反射(かへ)してゐる
そのすきとほる背中には もう宿るいのちもないのに
雨よ 哀歌(エレジイ)のやうに この町を濡らせ
僕は静かな夢のなかで あの遠い夏をふりかへる
おまへの脱ぎすてた さびしい銀のともしびのなかで

#日記広場:小説/詩




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