Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



カウンターの告白

「いい曲ね」
隣の女が、グラスの縁を指でなぞりながら呟いた
低く、かすれたその声は
スピーカーから流れるブルースによく似ていた
「ああ、魂を削り取るような歌さ」
俺はバーボンを口に含み、短く応える
グラスの氷が、チリリと小さく鳴いた
それが俺たちの、最初の乾杯だった
「こんな夕暮れには、すべてを忘れたくなるわ」
彼女の瞳に、ネオンのブルーが冷たく反射する
訳ありの過去など、この街では珍しくもない
詮索するのは、野暮ってものさ
「忘れる必要なんてない」
俺は煙草に火をつけ、紫煙を天井へと逃がした
「ただ、今夜の音楽に溶かせばいい」
彼女は小さく笑い、自分のグラスを飲み干した
言葉は途切れ、また静寂が戻る
だけど俺たちの間には
確かなリズムが、確かに流れていた

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