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河もにうつる夏の花火4


Ⅰ
だれも知らない草の葉の
そのかそけき囁きのひびく処で
ぼくらはそっと息をひそめてゐた
夕闇のなかに風がそよぎだすのを
遠い街のざわめきをよそに
ちひさな雲が夜の隅に迷ひこむ
きみの横顔はかすかに匂ひ
ぼくの心は千々に震へてゐた
そのとき 静かな水のおもてに
ひとつのひかりが零(こぼ)れ落ちた
それは音のない遠い花火の
かなしい追憶のはじまりのやうに
Ⅱ
あかいひかりが あをいひかりが
水面(みなも)を滑るやうにひろがっては
またたくまに闇へと還ってゆく
流れる雲の影のやうに はかなく
きみは何も言はずにただ見つめてゐた
ひらかれては消えゆくその花の影を
ぼくの手のひらを吹き抜ける風は
いつか失はれるものたちの冷たさをおぼえて
さやさやと鳴る夜の草むらのなか
ぼくらはここで何を待ってゐるのだらう
過ぎ去った日の あの一瞬のきらめきを
Ⅲ
もうすべては夜の底へと沈み
暗い河の水だけが ただ流れてゆく
ぼくらの秘密の場所には
冷たい風と 草の匂いだけがのこされて
いつかぼくがこの場所を忘れても
あのちぎれた雲のゆくえを忘れても
夏の夜の あの短いまたたきは
だれに告げることもなく そこにありつづける
さようなら ぼくのやさしい面影よ
風にちぎれて消えた あのあざやかな幻よ

空にひらいたひとつの輪が
静かな河もにもうひとつの輪をむかへる
二重の円(まどか)えがいたあの夏のまたたきを
ぼくは今も 窓辺の風のなかに夢みてゐる

#日記広場:小説/詩

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2026/07/12 20:44
> 眠さん
              (((*≧艸≦)ププッ
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2026/07/12 20:11
> 音.さん
∩∩
(。・x・)
OuuO ⓣⓗⓐⓝⓚ ⓨⓞⓤ♪
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2026/07/12 18:59
読みながら、記憶というものは不思議だなと思いました。

そのときには何でもなかった風や匂いまで、
あとになって心の奥から急に戻ってくることがあります。
出来事そのものより、言えなかったことや、隣にいた人の気配のほうが長く残ることもあります。

誰にも知られず、記録にも残らない時間でも、本人の中ではずっと消えない。
そういうものが、その人の見方や生き方を、気づかないところで形づくっているのかもしれません。

空に咲いた花火と、河面に映った花火。その二つが重なって見えるところが、とても好きでした。
目の前にあったものは消えても、心に映ったものまでは消えないのですね。
少し寂しくて、それでもどこか温かい詩でした。




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