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星屑の森によせて3


微かな風が、色褪せた鍵盤をなでてゆく。
追憶のなかでだけ、その歌は静かに響きつづける。
星屑の森によせて
だれもいない、がらんとした部屋のすみに、
古いオルガンが、ぽつねんと眠っている。
星の光が、窓のすきまからそっと忍びこんで、
象牙(ぞうげ)の鍵盤を、淡い銀色に染めていた。
むかし、そこには、
硝子(がらす)細工のようになめらかな、細い指があった。
もう、けっして触れることのない、あのやわらかな指先が、
あえかな音階(おんかい)を、ひとつ、ひとつ、紡いでいた。
風が、梢(こずえ)をゆらしてすぎてゆく。
まるで、だれも弾かない鍵盤を、そっとためしに押すように。
僕の胸の奥で、かすかに鳴る、さびしい和音。
それは、いちどきりの幸福(しあわせ)の、ちいさな残響。
星屑の森の、しずかな夜の底。
僕は、目をとじて、ただ、聴いている。
もう二度と、だれも訪れることのないその場所で、
消え入りそうな、オルガンのうたを。_

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