砂の砦、あるいは失われた歌へのソナチネ
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/07/07 05:19:09
I. 渚に咲くもの
風のとおるみちすじに ひそやかに
うす紅のともしびをともすものがある
白浜の かわいた砂のくぼみに
ハマヒルガオは かすかな記憶のようにひらかれていた
うす紅のともしびをともすものがある
白浜の かわいた砂のくぼみに
ハマヒルガオは かすかな記憶のようにひらかれていた
波のきれはしが たえずその足元を濡らし
洗いたてられた貝殻が 光をはね返している
おまえはそこに ひとつの影をおいて去った
まるで最初から 風のなかの幻であったかのように
洗いたてられた貝殻が 光をはね返している
おまえはそこに ひとつの影をおいて去った
まるで最初から 風のなかの幻であったかのように
耳をすませば あわい潮騒の階調(しらべ)のなかに
むかし聴いた ソナチネの終楽章がまじっている
けれどそれは もう誰の耳にもとどかない歌
むかし聴いた ソナチネの終楽章がまじっている
けれどそれは もう誰の耳にもとどかない歌
去った季節の うしろ姿ばかりを追いかけて
わたしは今日も この渚をひとり歩いている
砂に埋もれてゆく あの日のはかない約束とともに
わたしは今日も この渚をひとり歩いている
砂に埋もれてゆく あの日のはかない約束とともに

























