面倒な商材売りの輩
- カテゴリ:人生
- 2026/07/02 19:58:13
夜霧の街角で男は叫ぶ
『成功の鍵』だと小冊子を掲げて
濡れ手に粟の夢物語
男のスーツは汗と埃で泣いている
分厚い紙束 時代遅れのロマン
誰かの不幸で塗り固められた階段
それを登れば光が見えると
男は必死に ひどく面倒にまくしたてる
「この通りにやれば全てが手に入る」
男の瞳は濁った琥珀色
だがグラスの中身はただの水道水だ
渇きを癒やすこともできず
薄利多売の商売は 今日も誰にも届かない
硝子窓を叩く冷たい雨
男の足元は泥でぬかるんでいる
誰にも相手にされぬ商材を抱え
それでも男は歩き続ける
夜の帳(とばり)に溶けていく
哀れなピエロのように
俺は男の肩をポンと叩き、言った。「いいか。人を騙すための言葉なんて、この街ではすぐに錆び付くんだ。お前の売るその『成功のシナリオ』には、泥水の中で血を流す覚悟が足りない」。
男は俺の言葉の意味を理解できたかどうかは分からない。ただ、肩をすくめ、再び重いアタッシュケースを抱え直して、雨の降る街へと消えていった。

























