Nicotto Town ニコッとタウン

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春の嵐


あらい風が 青い梢を揺すぶつてゐる
ひそやかに咲いたばかりの 花びらが
僕の帽子のうえに また肩のうえに
ちぎれた手紙のやうに 散り急いでゐる
僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
あかるい乱気流のなかに 立ちつくす
きみと歩いた あのなつかしい並木道は
いまはもう 遠い追憶の底に沈んで
ひとはみな ゆくえも知らず去つてゆき
街のざわめきだけが 激しく吹き抜ける
窓の硝子(ガラス)を叩くのは 春のしづくだらうか
行くなと叫ぶ 僕の小さなこゑは
たちまち嵐のなかに かき消されて
ただ うす紅色の哀しみだけが 僕を濡らす

#日記広場:小説/詩




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