パリの森
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/06/27 14:47:48
1
木々のあいだに ひそやかな光がこぼれてゐる
それは 僕たちの知らない古い言葉のやうに
五月の緑のなかに しづかに佇むとき
僕は ひとりの旅人になつてしまふ
木々のあいだに ひそやかな光がこぼれてゐる
それは 僕たちの知らない古い言葉のやうに
五月の緑のなかに しづかに佇むとき
僕は ひとりの旅人になつてしまふ
散歩道(あれえ)の奥へ 奥へとつづく足跡は
だれが残した うすい追憶だらう
池の面には あわい水色をした空が映り
一羽の白鳥が さびしい輪を描いてゐる
だれが残した うすい追憶だらう
池の面には あわい水色をした空が映り
一羽の白鳥が さびしい輪を描いてゐる
都会(まち)のざわめきは 遠い波の音のやうに
この梢のしたでは 優しくかき消され
僕は ひとつの古いベンチに腰をかける
この梢のしたでは 優しくかき消され
僕は ひとつの古いベンチに腰をかける
忘れてしまつた むかしの歌を口ずさめば
木漏れ日は 僕の肩にやさしく触れて
ただ かすかな風のなかに消えてゆく
木漏れ日は 僕の肩にやさしく触れて
ただ かすかな風のなかに消えてゆく
2
夕暮れが 静かに梢を染めてゆくころ
森は 深い(あると)の楽器のやうに鳴りひびく
幹の影が 長く、長く伸びて
僕の憂鬱を そつと包みこんでしまふ
夕暮れが 静かに梢を染めてゆくころ
森は 深い(あると)の楽器のやうに鳴りひびく
幹の影が 長く、長く伸びて
僕の憂鬱を そつと包みこんでしまふ
きみと歩いた あの並木道はどこへつづくのか
いまはただ 枯葉のささやきを聴くだけ
届かない手紙のやうに ちぎれた雲が
パステル色の空を あてもなく流れてゆく
いまはただ 枯葉のささやきを聴くだけ
届かない手紙のやうに ちぎれた雲が
パステル色の空を あてもなく流れてゆく
夜の帳が この静けさを満たすまえに
僕は もう一度だけ振り返る
それは 僕の心に咲いた 小さな青い花
僕は もう一度だけ振り返る
それは 僕の心に咲いた 小さな青い花
森をぬければ またあかるい街の灯(ともしび)
けれど僕の帽子には ひとしずくの
緑の寂しさが 残つてゐるだらう
けれど僕の帽子には ひとしずくの
緑の寂しさが 残つてゐるだらう




























