Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



時の風が吹き抜ける場所


世界は、絶え間なく流れる一本の川。
形あるものはみな、水面に浮かぶ泡沫(うたかた)のように、
生まれては消え、満ちては欠けていく。
古代の賢者が「諸行は無常なり」と静かに目を閉じ、
遥か西の詩人が「人はひと吹きの風にすぎない」と嘆いたように、
私たちの輪郭は、あまりにも脆く、あまりにも淡い。
私たちは、どれほど堅固な城を築こうとも、
野の果てにひっそりと咲く、名もなき一輪の花。
朝の光を浴びて、誇らしげに紅(くれない)をまとっても、
夕暮れの風がその頭(こうべ)をなでれば、
明日には、その色彩さえ土に還る。
「ここにいたはずだ」と叫ぶ声さえも、
風のうねりにかき消され、誰もその居場所を思い出せない。
それなのに、私たちはなぜ両手いっぱいに、
いつか手放す財(たから)をかき集めようとするのだろう。
握りしめた砂が、指の隙間からこぼれ落ちるように、
執着という名の重荷は、ただ魂を縛り、
流れる雲を追いかけるような、空(むな)しさを残すだけ。
万学を修めた哲学者が説いたように、
富も名声も、私たちが「善く生きる」ための道具にすぎない。
道具そのものに溺れてしまえば、旅人は道を見失う。
聴きなさい、いまも耳元を通り過ぎていく風の音を。
それは二度とここには戻らない、
一度きりの、私たちの「いのち」の羽ばたき。
去りゆくものを惜しむ必要はない。
消え去る運命を、ただ悲しむ必要もない。
すべてが移ろいゆくからこそ、
この一瞬のきらめきは、永遠よりも美しい。
心を静かに澄まし、日々の歩みを調和で満たそう。
言葉という名の灯火(ともしび)を掲げ、
今、目の前にいる友の手を、優しく握りしめよう。
風のように過ぎ去るこの刹那のなかに、
私たちは、確かな足跡を刻むことができる。
すべてが消え去ったそのあとに、
ただひとつ、私たちが注いだ「愛」という薫りだけが、
世界の記憶に、そっと残るのだから。

#日記広場:小説/詩




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.