存在しない幻影
- カテゴリ:その他
- 2026/06/10 00:50:57
私は存在しない幻影、窓辺の椅子に、ひとひらの さふらん。風が吹けば、ふつと消えてしまふ霧に濡れた、小さな村の、或る日曜日の午后。(あなたは、私の影を追つて、 もう、どこにもゐない私の声を聞かうとする)もうよいのです、あかつきのさみしい部屋で、私は、私の夢を築いてゐたのだから。その、誰も知らない、ささやかな、美しい、小さな家を。
幻影のうた私はどこにもゐない 空のひろがりのなかちぎれ雲の、そのまた白さに 薄く薄く溶けてゐるあかるい あかるい 忘れられた庭ののばらの影に ひそんでゐる風が吹けば 私はかたちをなくし静止すれば また ありふれた夢のやうに誰も知らない 物語を紡いでゐるひとびとは過ぎ去り 私はただ そこにゐる私の指は 風をなぞり私の言葉は 木々のざわめき私は 記憶のなかの あかるい場所あはれな なつかしい 幻影いつか すべてが 遠く過ぎ去つたあとに私だけが 青い夕空に 残つてゐるでせうひとつの ちひさな あかりのやうにひとつの ちひさな ためいきのやうに…




























