Nicotto Town ニコッとタウン

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月の満ち欠けと埠頭のブルース


割れたガラス窓の向こう、
波は黒いベルベットのように埠頭をなでる。
ターンテーブルに落ちた針が、
エタ・ジェイムズの哀愁をかすれた空気に響かせた。
"At Last"——ついに愛を見つけた、と彼女は歌う。
だが、この霧深き波止場で待つのは、
裏切りと、錆びついた錨の鎖の匂いだけだ。
月光は埠頭を濡らす銀のナイフ。
コートの襟を立てて煙草に火をつける。
煙は夜の闇に吸い込まれ、
女の歌声は、遠ざかる汽笛と溶け合っていく。
甘く、そしてどうしようもなく切ない調べ。
この街では、誰もが何かを失い、
それでも夜を生き延びるために音楽を求める。
埠頭の果て、波打ち際に立つとき、
エタの魂が俺の背中をそっと抱きしめた。
今夜もまた、月明かりの中のブルースが静かに流れている。

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