Nicotto Town ニコッとタウン

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月光の埠頭

台風が去った後の埠頭は、ひどく静かだった
ちぎれた雲の隙間から、冷たい月光が零れ落ちる
海面は黒いインクのように凝固し
錆びついたボラードが、誰かの墓標のように佇んでいた
コートの襟を立て、煙草に火をつける
紫煙は月明かりに溶け、すぐに消えた
ここにはもう、誰もいない
あいつが残した、かすかな香水の残り香以外は
「約束の時間は過ぎたな、月よ。
あいつはもう、この船には乗らないらしい」
ポケットの中で、冷え切ったスキットルに触れる
結局、俺たちはいつもすれ違う
ブルースの旋律だけが、波の音に混ざって
俺の耳の奥で、低く、重く、リフレインしていた
月光に照らされた影が、不自然に長く伸びる
それが俺の、唯一の相棒だ
あいつのいない夜を、俺はまた一人で歩き出す
凍りついた光の海を背に、次の街へ向けて

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