Nicotto Town ニコッとタウン

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六月のスコール


窓の外、紫陽花が泥にまみれて泣いている。
今年最初の招かれざる客が、南の海から這い上がってきた。
気象台の連中はそれを「台風」と呼び、俺はただの「厄介ごと」と呼ぶ。
湿った風が、ビルの隙間で錆びたナイフのように口笛を吹いていた。
バーボンのグラスに、生ぬるい結露が滴る。
六月の雨は、いつだって余計な記憶を連れてくる。
あいつが逝ったのも、こんな風に湿度の高い夜だった。
診断書のインクは、今夜の雨と同じくらい冷たく滲んでいた。
ガタつく窓枠が、都会の悲鳴を代弁している。
停電が街を黒く塗りつぶしても、俺の煙草の火までは消せやしない。
荒れる嵐の真ん中で、マッチを擦る。
一瞬だけ照らされるのは、乾ききった孤独の輪郭。
夜が明ければ、すべては水に流されるだろう。
壊れた傘と、誰かの嘘と、昨日までの未練。
叩きつける雨音を子守唄代わりに、俺は深くハットを目深に被る。
通り過ぎるのを待つんじゃない。
俺はこの泥濘(ぬかるみ)のなかを、ただ足跡を刻んで歩くだけだ。

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