Nicotto Town ニコッとタウン

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5月の霧笛、あるいは午前4時の終止符


5月だというのに、ここは冷える。
街は深い霧の底に沈み、街灯はただの薄ぼんやりとした黄色の染みだ。
誰もいない波止場のベンチで、私はバーボンを一口含み、
その安っぽい喉越しで、かろうじて現実の輪郭を確かめる。
背中を刺すような霧の湿り気は、
かつて私が愛した、あるいは裏切った誰かの指先の冷たさに似ている。
遠く、湾の入り口で霧笛が鳴った。
――フォン、フォン。
不機嫌な、終わりのない独白のようにな。
あれは船を導いているのではない。
迷い込んだ魂に、ここが墓場の手前であることを教えているのだ。
私のコートは、潮風と過去の残り香を吸って重い。
5月の陽光なんて、この街には届かない。
届いたとしても、霧に食い荒らされるだけだ。
もう一杯だけ、この冷えた夜を飲み干せば、
この霧も、私という男の輪郭も、
何事もなかったかのように、薄い朝霧に溶けていく。_

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