Nicotto Town ニコッとタウン

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灰色の行進

頭上のスクリーンが「幸福」を垂れ流し
雑踏は、巨大な一つの生き物として脈動する
右へ倣えの信号に
数千の靴底が、乾いた音で同調する
奴らは「和」という名の麻酔を打ち
自分の顔を、誰かの背中に預けて歩く
同じ呼吸、同じ絶望
均質化された細胞のひとつとして
俺は、その流れを逆行する
肩がぶつかれば、無機質な拒絶が返る
それでいい
混ざり合って溶けるよりは
弾き飛ばされる痛みのほうが、まだ生を感じる
生地の馴染まない
新品のコートの襟を立てる
このざらついた感触が
俺と、この世界を隔てる唯一の防波壁だ
「理解し合おう」と、薄汚れた看板が笑う
俺は唾を吐き、視線をアスファルトに落とした
分かち合えるものなど、最初からない
あるのは、奪い合うための椅子と
誰のものでもない、この孤独な視界だけだ
スクランブル交差点の真ん中で
俺は足を止め、深く煙を吐き出す
数万の瞳に映っても
俺を見ている奴は、ここには一人もいない
それでいい
この街の静寂は、喧騒の中にしかないのだから

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