Nicotto Town ニコッとタウン

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春の陽炎のなかで

野原のすみで 光の糸が もつれあえば
春の陽炎(はるひがえり)は ゆらゆらと 立ちのぼる
そこに だれもいないはずの 汽車がいて
銀色の吐息を 空に ほどいてゆく
見つめれば 風景は 淡い水彩のよう
鉄の重みも わすれられた 古い切符も
みな 陽光(ひかり)のなかに 透きとおって
どこまでが 夢なのか ぼくにはわからない
星屑を 夜のあいだ 運んでいた車輪は
いまは やわらかな草の波に くるまれて
しずかな 午後の微睡(まどろみ)を むさぼるだけ
ああ ぼくの心も あの陽炎に まじり
形をうしない 青い空へと 昇ってゆきたい
だれもいない客車の いちばん光る 窓になって

#日記広場:小説/詩




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