Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



埠頭の不協和音(ディスコード)

霧が濡らす、錆びついたクレーン。
誰もいないコンテナの影、
午前二時の埠頭は、
モンクのピアノ(『'Round Midnight』)のように、
ひどく不機嫌で、愛おしい。
タバコに火を点ける。
マッチの炎が、波間に消える孤独を照らした。
あいつはもう来ない。
この苦いバーボンと、
跳ねるような、重たいリズムだけが、
俺のコートに張り付いている。
不揃いな和音(コード)が、
街の裏側でくすぶる嘘を暴く。
埠頭の風は、冷たい。
けれど、このピアノの音色(ねいろ)だけは、
逃げ場所のない俺の背中を、
少しだけ優しく叩いた。
待つのは慣れている。
モンクが最後のキーを叩き落とし、
静寂が訪れる、その瞬間まで。
ただ、静かに、
煙を吐き続けるだけさ。_

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