Nicotto Town ニコッとタウン

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濁った琥珀の午後


街角のスピーカーが吐き出すのは
聞き飽きた「サマータイム」のジャズ・スタンダード
ガーシュウィンの亡霊が
逃げ水の中で気だるそうに踊っている
ビルの影はナイフの刃先のように鋭く
焼けたアスファルトを切り裂いていた
俺はトレンチコートを脱ぎ捨てたい衝動を
火をつけたばかりのラッキーストライクと一緒に飲み込む
「……金持ちになるのは簡単じゃない、坊や」
独りごちは、湿った海風にかき消された
隣のダイナーから漂う
焦げたコーヒーと、誰かの嘘の匂い
カウンターの隅で、女が一人
塗りすぎた口紅でグラスの縁を汚している
あいつが言った「永遠」なんて言葉は
氷の溶けたグラスの底
水っぽくなったウィスキーと同じだ
一気に飲み干せば、ただ苦いだけが残る
サマータイム
赤ん坊の泣き声も、魚の跳ねる音も聞こえやしない
聞こえるのは、錆びついた扇風機の悲鳴と
俺の心臓が刻む、不器用なビートだけだ
陽が沈むまで、あと一時間
この街が闇を纏い
本当の顔を見せるまで
俺はただ、この不協和音に身を委ねることに決めた
影が伸び、サックスの音が歪む
マティーニのオリーブのように
俺の孤独は、今日もどこまでも冷たい

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