Nicotto Town ニコッとタウン

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喧騒への埋没5

背後で店のドアが閉まる音がした。
それと同時に、眠りから覚めた街が、
容赦ない騒音を俺の鼓膜に叩きつける。
走り始めたトラックの排気音。
シャッターを上げる無機質な金属音。
誰もが昨夜の孤独など忘れた顔をして、
昨日と同じ、名前のない一日へと急いでいる。
俺の足音は、すぐに濁流のような雑踏にかき消された。
ポケットの中で、書き終えたばかりの紙片が、
カサリと、乾いた音を立てる。
それは、あの女と分け合った、
一瞬の沈黙よりも遥かに頼りない。
信号が変わり、人波が俺を追い越していく。
振り向いたところで、そこにはもう、
さっきまでのバーも、錆びたタイプライターもない。
ただ、冷たい風が頬を撫で、
インクで汚れた右手が、少しだけ痺れている。
俺はこの喧騒の一部になり、
ただの「通りすがりの男」へと戻っていく。
それでいい。
街がすべてを忘れ去る速さこそが、
俺たちのような手合いには、唯一の救いなのだから。

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