Nicotto Town ニコッとタウン

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終着の埠頭

冷たい雨が、波止場のコンクリートを黒く染めている。
視界の端で、古ぼけたクレーンが骸骨のようにそびえ立ち、
鉄の錆びた匂いが、肺の奥まで突き刺さる。
俺はコートの襟を立て、
配達されることのなかったその一通を、
荒れ狂う海へと差し出した。
封筒は、もう雨を吸って重い。
中身の言葉も、きっと泥のように溶け出しているだろう。
「さよなら」さえ書けなかった不器用な指が、
最後の瞬間(とき)を惜しむように震える。
闇の向こうで、大型船の汽笛が低く吠えた。
それは、過去を断ち切る合図のようにも聞こえるし、
戻らぬ男を嘲笑う、弔いの鐘のようにも聞こえる。
俺は手を放した。
白い封筒は一瞬、カモメの羽のように舞い、
どす黒い波間に飲み込まれて消えた。
宛先不明。受取人不在。
この世のどこにも居場所のない想いは、
海の底で、静かな水圧に押し潰されるのがお似合いだ。
ライターを回すが、雨の湿気で火はつかない。
それでいい。
燃やすことさえ許されない、
これが、俺が選んだ「配達完了」の儀式だ_

#日記広場:人生




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