桜祭りについて⑯
- カテゴリ:日記
- 2026/03/27 06:13:10
02.日本の桜の歴史
日本の春の風物詩である花見。毎年たくさんの人が咲き誇る桜を楽しみますが、この文化はいつから始まったのでしょうか。また、日本各地に植えられ、馴染み深い’染井吉野’は、どのようにして全国に広まったのか。今回は、そんな日本の桜の歴史をさまざまな角度から紐解いていきます。
桜は古くから日本人に寄り添う春を呼ぶ使者
日本には古くから野生種の桜が存在し、春になると一斉に花を咲かせ、春の訪れを知らせるとともに、日本人の目を楽しませてきました。
ヤマザクラ、エドヒガン、オオシマザクラが野生種を代表する3種です。なかでもヤマザクラは日本人にとってとても身近な存在でした。古来より春の到来を知らせる花樹として馴染み深く、江戸時代まで花見といえばヤマザクラがその対象だったのです。また、エドヒガンは長生きする種であり、特に樹齢が古い巨木は“一本桜”として観光名所となったり、天然記念物に指定されている個体も存在します。
「鑑賞意識が高まった平安時代 和歌にも桜の歌が詠まれるように」
3月3日の桃の節句は、もともとは中国から伝わったもので、春を祝い無病息災を願う厄払いの「上巳(じょうし)の節句」という儀式でした。奈良時代まではその儀式に桃や梅を使用していましたが、いずれも中国から持ち込まれた観賞用の植物であり、日本には自生しない外来種でした。
「桃や梅は貴族社会で珍重されていましたが、平安時代になるとどこにでもある身近な桜を愛でようという機運が高まり、儀式や行事に桜が用いられるようになりました。奈良時代の『万葉集』にも桜が詠われていますが、儀式的な意味は無かったようです」(勝木先生)。
春の花の象徴として桜が詠まれるのは平安時代の「古今和歌集」からで、桜を愛でる文化が生まれたのは、この時代からだろうと推測されます。
「観賞意識の高まりから栽培化へ 日本最古の栽培品種も生まれる」
平安時代には、ヤマザクラを用いた桜の栽培化も行われるようになりました。
「桜の鑑賞性が高まったのでしょう。庭に植えるための苗木生産も始まり、野生種ではない栽培品種も誕生しました。もっとも古い歴史を持つのが‘枝垂桜’であり、平安時代の文献に名前の記載が確認されています。なお、‘枝垂桜’は野生種であるエドヒガンの突然変異だと考えられています。現在も調査中ですが、当時、育てられた個体の子孫が、日本全国に広まったと推測されます」
オオシマザクラは、第1週目のもっと知りたい! 身近な桜たちで紹介したとおり伊豆諸島の大島などに自生していた野生種であり、当時の京都の人々はその存在を知りません。しかし、室町時代の文献にはオオシマザクラらしき記述が見受けられるようになりました。
「伊豆諸島から鎌倉に渡り育てられていたものが、すでにヤマザクラが栽培されていた京都へ持ち込まれたと考えられます」(勝木先生)。
平安時代に始まった桜の栽培は鎌倉時代に発展し、流通が始まっていたのかもしれません。
「全国に植樹されているすべての‘染井吉野’は江戸時代に生まれた1本のクローンだった」
桜の代名詞ともいえる‘染井吉野’は、エドヒガンとオオシマザクラによる種間交雑により生まれた栽培品種であることは、第1週のもっと知りたい! 身近な桜たちで紹介したとおりです。そして、その発祥地とされ、以前よりヤマザクラの苗木が生産されていた染井村(現在の豊島区駒込)が名前の由来となっています。
「江戸時代の頃、染井村には多くの植木職人が住んでいて、そこで接ぎ木苗が作られていたと考えられます。増殖した‘染井吉野’の接ぎ木苗は初期成長が早く、また、大きく美しい花が多くつくことがわかり、さらに各地へと広まっていったのでしょう」
‘染井吉野’のはじめの1本が、どのように生まれたのかはわかりませんが、そのクローンである個体が、明治以降に全国で植樹された結果、いま、私たちの目を楽しませてくれていると思うと、‘染井吉野’に宿る悠久の時を感じさせられます。
「接ぎ木に適し環境適応性も高いことから、明治時代以降全国で植樹されました。また、接ぎ木苗が現在まで安価に作り続けられていることも大きな要因です」。接ぎ木された‘染井吉野’は、わずか2年で花を咲かせることもあるとか。ほかの桜が苗木から花が咲くまで10年ほどかかることを考えると、‘染井吉野’の成長の速さには驚かされます。
「芸術に大きく影響を与える桜の魅力」
平安時代より日本人に愛でられてきた桜は、芸術の世界にも大きな影響を与えています。古くは万葉集にも桜を詠んだ歌が44首あり、古今和歌集には70首が詠まれています。江戸時代に発達した浮世絵にも多くの桜が描かれており、歌川広重の「名所江戸百景」や葛飾北斎の「富嶽三十六景」では、庶民が花見を楽しむ様子がうかがえます。
演劇の世界でも能の「西行桜」や、歌舞伎の「義経千本桜」など、桜を演出要素とする作品が存在し、それは、現代の映画やドラマでも共通しています。また、桜を題材とした曲も毎年春になると登場するなど、桜は、芸術家や表現者の創作意欲を刺激し、多くの名作を生み出す原動力にもなっているのです。

























