Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



硝子のライター

放課後の校舎裏は、いつも湿った土と
誰かが隠れて吸った安い煙草の匂いがした。
俺たちは、使い捨てのライターのように
火を灯す場所を探しては、空回りしていた。
「遠くへ行こう」
隣で彼女が言った言葉は、
排気ガスに混じって消えた。
約束なんて、撃ち尽くした後の空薬莢(からやっきょう)ほどにも
価値がないことを、俺たちはまだ知らなかった。
ボロボロの単車で切り裂いた夜風は
ナイフのように冷たく、鋭い。
バックミラーに映る街の灯りは、
涙で滲んで、ただの光の屑になった。
あれから、どれだけの月日が流れたか。
酒場で見かける若者たちの、無防備な背中を見るたび、
俺は飲みかけのバーボンを回す。
青春とは、二度と戻らない場所への片道切符だ。
ポケットには今も、
あの頃火がつかなかった
錆びた硝子のライターが、眠っている。

#日記広場:日記




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.