Nicotto Town ニコッとタウン

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悲しみの遠景

氷の溶けきったグラスの底に
沈んだ昨日の残り香を
指先でなぞる。
都会(まち)は
誰かの涙を飲み干しては
ネオンの飛沫を撒き散らす。
背中の傷が疼くのは
過ぎ去った季節のせいではない。
ただ、遠ざかる背中を
見送る術を知らなかっただけだ。
悲しみは
雨に洗われたアスファルトのように
鈍く、静かに
朝の光を撥ね返している。
言葉にすれば、嘘になる。
黙り込めば、毒になる。
俺はただ、煙草を燻らし
消えゆく輪郭を
「遠景」と呼ぶことにした。

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