Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



昭和終焉、赤煉瓦の断末魔

昭和六十三年。冬の湿った風が、
ひび割れた赤レンガの隙間を吹き抜ける。
あいつはいつも、高い窓から地上げ屋の黒い車
を眺めていた。
「あの光に、俺たちの居場所はない」
あいつの呟きは、遠くで鳴る工事の音に掻き消された。
窓の外には、建設途中の高層ビルの群れ。
明日を急ぐクレーンの腕が、
時代遅れのこの檻を、虎視眈々と狙っている。
かつて焼跡から立ち上がった壁も、
今やスプレーの落書きと、湿ったカビに侵食され、
一万札を振り回す街の熱気から、見捨てられていた。
やがて元号が変わり、
重機が赤レンガの心臓を一気に貫いた。
歴史という名の、無機質なスクラップ。
今、その跡地はコインパーキングになり、
誰もが昭和という病を忘れた顔で、アクセルを踏む。
だが俺のポケットには、今も
あの日拾った、煤けた煉瓦の破片が
冷たい鉛のように沈んでいる_

#日記広場:人生




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.