Nicotto Town



終幕のステップ


石畳を叩く靴音が
深夜の路地裏に、規則正しく響き渡る
それは、誰にも届かない
俺だけのレクイエムだ
振り返れば、ガス灯の影が長く伸び
追いかけてくる過去を、静かに引き離していく
一歩ごとに、おまえの記憶を
この冷たい地面に、刻み捨ててきたつもりだった
不意に吹き抜けた夜風が
喉元の熱を、容赦なく奪い去る
俺は無意識に、トレンチコートの襟を立てた
それが、世界との間に引ける
たった一枚の、薄い境界線だから
バーバリーのトレンチの襟を立てたところで
心の隙間風までは、防げやしない
だが、そうすることでしか
守れないプライドが、この歳になればある
雨に濡れた靴先が、鈍く光る
もう、目的地なんてどこにもない
ただ、この靴音が止まないうちに
夜の深淵へと、深く沈んでいくだけだ
サヨナラは、口にしない
石畳を叩く最後の一音が
その代わりをしてくれるはずだから

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