嘘の陰影
- カテゴリ:自作小説
- 2025/12/20 20:24:02
第一章
いつからだっただろうか…私には嘘を吐いている人から黒い靄(もや)の様な影の様な物が見える様になった。それは文字や声からも見えるものだ。色んな人や文字を見ていると世の中嘘塗れの世界に映る様になり、仕事もなるべく人と関わらない様に在宅ワークにして貰っている。…生き辛い事になったな…とふとベランダで煙草を吸っていた私だ。今日も仕事を終え、一通りの事は済ませ、夜空が見たくなった私だ。…夜の時間が一番落ち着くな…そんな事を考えながら深く煙を吸い込み、吐き出した。…「あーあ…」そんな言葉を小さく呟いていた。その日は下弦の月が綺麗に出ていた。…「月…綺麗だなぁ…」とぼんやりと月と煙草を楽しんでいた。…そろそろ買い出しに行かなきゃな…と月を見ながら考えていた。…明日にでも行くかな…吸った煙を肺の奥まで行き渡らせる様にし、ゆっくりと煙を吐き出す。季節は11月の半。ほんのりと冷たくなりつつある空気感の中、私は暫く月を見上げていた。…「さむ…」温まっていた身体が冷える程に月を見ていた様だった私は冷え切った身体で部屋に入る事にした。部屋へと戻った私は白湯を飲もうと思い、キッチンへと向かった。ケトルに水を入れ沸かし始めた。お湯が沸く迄の間また煙草を吸おうと思い、煙草を1本取り出した。私にとって煙草は呼吸をする為の物だ。大きく息を吸う様に煙を吸い込み細く長く煙を吐き出していく。…明日休みだし、買い出しにでも行こっと…明日の事を考えながら煙草を吸い続けていた。考え事をしている間にケトルのお湯が沸いていた。私は咥え煙草の儘タンブラーを準備し、お湯を半分程注ぎ残りの半分は水を入れた。出来上がった白湯と煙草を持ち、日記でも書こう…そう思った私は寝室へと向かった。寝室にはベッドとドレッサーが配置されている。私はドレッサーへと腰掛け、白湯を置き灰皿を準備し、持っていた煙草を置いた。まだ吸っていた煙草を消し、ドレッサーに置いてある日記へと手を伸ばした。日記の書き始めはいつも…今日も黒い影?が見えた…から始まる。



























