「反高市デモ」に前世紀的な残滓
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- 2025/11/07 00:09:16
「高市政権打倒デモ」都内で2000人練り歩く 「中国への侵略阻止を」右翼団体が怒声も (産経ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c0c47be3c4d579576eea7ebe32e8063887f82cac
要約
中核派系の団体などが、芝公園で「高市政権打倒/改憲・戦争阻止1万人大行進」を開催し、2150人が参加。高市政権を「中国への侵略戦争に突進する」政権と評し、「中国侵略戦争阻止!」などを訴え都内をデモ行進した。
「なぜ左派・過激派の一部団体は “中国への侵略戦争阻止”を訴えるのか
反高市デモでは、「中国への侵略戦争を阻止せよ」というスローガンが掲げられました。しかし、実際のところ、日本やアメリカが中国に対して侵略を計画しているという事実はありません。
むしろ、中国の方が南シナ海や台湾周辺、尖閣諸島で軍事的な圧力を強めていますし、中国の軍拡は「帝国主義的拡張」そのものです。
それにもかかわらず、なぜ一部の団体は「日本が中国を侵略しようとしている」と訴えるのでしょうか。
その背景には、戦後日本に根強く残る思想的な構図があります。
1. 戦後左派に根付いた「反米・親中」構図
戦後の左派運動には、「反戦=反米」という考え方が強く結びついていました。
第二次世界大戦後、日本はアメリカの占領を経て再軍備の道を歩みますが、その過程で多くの左派勢力は「アメリカは侵略者」「中国やソ連は平和勢力」と位置づけました
。
1960年代の安保闘争やベトナム反戦運動では、「アメリカがアジアを支配している」「日本はその協力国だ」という見方が広がりました。
この価値観が一部の団体に今も残り、冷戦構造が終わった現在でも、「帝国主義のアメリカ」と「被害者の中国」という古い図式を引きずっているのです。
2. 思想的背景 ― マルクス主義の影響
もう一つの要因は、マルクス主義的な世界観です。
マルクス主義では、資本主義の国、つまり日本やアメリカのような国は「帝国主義国家」であり、他国を支配・搾取する側とされます。一方、中国のような社会主義国は「被抑圧側」、つまり帝国主義に抵抗する正義の側だとみなされます。
この考えをそのまま今の国際情勢に当てはめると、「日米は侵略者、中国は被害者」という単純な構図になってしまいます。そのため、中国の軍拡や威圧的行動でさえ“防衛的”と解釈され、日本の防衛強化は“侵略準備”と見なされてしまうのです。
現実よりも思想の枠組みを優先してしまう傾向が、今も残っているのです。
3. 「反権力」という姿勢の固定化
また、これらの団体に共通するのは「反権力」という立場です。
彼らにとって、日本政府や自衛隊、日米同盟といった存在はすべて“国家権力の象徴”であり、“抑圧の道具”とみなされています。
そのため、どんな政権であっても、防衛力を強化すれば「軍国主義の復活だ」と批判します。現実の安全保障よりも、「政府に反対すること」自体が目的になっているのです。
このように、運動の理念が自己目的化し、現実とのずれが大きくなっていることが特徴です。
4. 「運動の惰性」としての側面
戦後の反戦・反安保運動を担った団体の多くは、「反戦・反安保」を自らの存在意義としてきました。もし今になって「中国が脅威だ」と認めてしまえば、これまでの主張が根底から崩れてしまいます。
そのため、時代が変わってもスローガンだけが残り、現実との乖離が進んでいるのです。
5. 現代中国と左派思想の矛盾
1978年に鄧小平が改革開放政策を打ち出して以降、中国は社会主義計画経済を離れ、市場経済を導入しました。外資を受け入れ、企業の競争を促し、株式市場も整備。国有企業は株式会社化され、個人の富裕層も増えました。
現在の中国は名目GDPで世界第2位の経済大国であり、もはや「社会主義の被害者国家」ではありません。しかし、一部の左派は依然として「中国=平和国家」というイメージを保ち続けています。
現実の中国社会では、共産党幹部の家族は不動産や外資口座を通じて資産を増やし、
本来共産主義の敵であるはずの資本家や民間企業経営者も共産党に入党し、新たな階級構造を形成しています。中国では格差拡大、労働者の搾取、資本の集中といった典型的な資本主義的問題が生じています。
また、途上国に対して、過剰な融資(借金漬け)で経済的・政治的な支配を強める一帯一路政策は21世紀の「新植民地主義」との批判もあります。
もし本当にマルクス主義を信じるなら、今の中国こそ批判の対象「ブルジョア国家」であるはずです。それでも彼らが中国を擁護し続けるのは、思想的な信仰を手放せないからだといえるでしょう。
6. 現実的な平和主義とは
現代の平和とは、ただ「戦わない」ことではありません。
脅威に対して抑止力を持ち、戦争を起こさせない体制を整えることが、現実的な平和主義です。「中国への侵略戦争阻止」という言葉は一見平和的に聞こえますが、もしその背景に時代遅れのイデオロギーがあるなら、むしろ現実の平和を妨げることになりかねません。
真の平和は、理想ではなく現実を見据えた冷静な判断の上に築かれます。
日本に今求められているのは、過去の思想ではなく、現代の国際情勢を正しく理解する力なのです。
























