Nicotto Town



タワマン最上階の恋

改札を抜けて三分
雨に濡れずに辿り着く
この恋は、
天候に左右されない設計だった
エントランスは
顔認証と沈黙で満ちている
君の笑顔も、
最近はパスコードのように
入力しないと現れない
コンビニは一階、
カフェは二階、
ジムは三階、
君の不満は
エレベーターの階数表示のように
静かに積み上がる
「便利だね」と言った日々は
冷蔵庫の自動製氷機のように
繰り返されて
やがて味を失った
窓の外には
終電を逃した人々の群れ
私たちは
その群れを見下ろしながら
会話を省略していった
この恋の結末は
管理組合の議事録のように
誰にも読まれず
静かにファイルされる
そしてある朝、
君は駅へと直結する通路を
スーツケースと共に歩いていた
傘もいらず、
涙もいらず
ただ、便利に別れた

#日記広場:日記




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.