「街とその不確かな壁」
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/09/15 08:08:54
村上春樹氏の新作が文庫になっていたので読み始めた(上巻の2/3くらい)。
序盤は正直、村上氏独特の比喩の面白さもなくて退屈に感じたのだけれど。
読み進めるごとに引き込まれる。
「不確かな壁」とは何か。
途中まで読んだ印象では、そのイメージは生者と死者を隔てるもののように感じる。
主人公はやむにやまれぬ理由から「壁」を超えた世界に行くのだけれど
その情景は平和でありつつも、残酷さと様々な「痛み」を主人公にもたらす。
街も壁も主人公が作り上げた虚構世界ではないかという疑念は終始感じる。
だからこそ「不確か」なのだろう。
しかし、自分が作り上げたはずの虚構世界が自分自身を蝕むことがあるのも事実かもしれない。
居心地が決して良いとは思えないこの現実世界を少し俯瞰してみたくなったら
この物語はおススメかも。
この作品は(おそらく)《世界の終わりとハードボイルドワンダーランド》から
派生してる作品なんだろうなと思いながら積読してます。
新刊で買ってきたんだけどね。
村上氏の作品は短編や以前発表された作品から派生したり
何かしら世界観が同じものがあったりするので。
例えば短編集「蛍・納屋を焼く」と言う短編集の中から
「ノルウェイの森」ができたり。
読み比べてみるのも面白いと思います。
村上先生は何度もノーベル文学賞候補に登るほどの文豪なので、繊細で緻密な文章を書けるのでしょうね。
今読むと違うのかな?