オジー・オズボーンの私的意味
- カテゴリ:音楽
- 2025/07/26 09:32:06
大人の集うコミュニティだからして、オジーへの追悼は1件しか見なかった。
私にしてもファンではなく、ラウド/ヘヴィ系をあまり聴かなくなっている。
だが世評と異なる自分なりのオジーオズボーン観は書いておきたい。
初聴は70年前後、サバスの『Evil Woman』。歌声がチャーミングだと思った。
第一印象は変わることなく、彼の声と人生にはチャーミングという語が似合う。
意外なほどデス声や奇声と程遠い、ポピュラー的な歌唱なのです。
シナトラやクロスビー、ハリウッド黄金期のクルーナー、
無論ビートルズへの敬愛、彼の歌を形成しているのはポップス魂でしょう。
テーマや題材はともかく、彼の歌唱はポップスとして聴いてほしい。
プログレシッブロックや前衛とほぼ無縁ですよね。
音楽で食うにあたり、自分のアイドル達と同じベクトルを維持しつつ、
聴衆を置きざりにする独善的音楽を決して演らないと決めたのだと思います。
だからこそ、ボーカリスト・ソングライターとしてよりも、
ディレクター/プロデューサー/プロモーター/オルガナイザーといった、
カリスマでなければ務まらない数々の仕事をこなせたのでしょう。
純粋にボーカリストとして評価するなら三流(ご批判は甘受)。
Mジャガー、Rダルトリー、Sマリオット、Rプラントは勿論、
CファーロウやFミラーにも及ばない。彼に歌唱力を期待してはダメ。
ド下手でも、なぜかどうしようもなく聴きたくなる歌手っていますよね?
日本の70年代アイドルは癖だらけの方々が多かったけど、
彼もまたヘタウマ系の一人。納得する人は多いのではないか。
ソングライターとしても見事なまでのPOP性を貫いた。
歌詞やサウンドから一歩離れ、歌メロを聴いてみるとわかる。
いっしょに歌いたくなる、シンプルなノリのメロばかり。
この点で殆どのラウド/ヘヴィ系ボーカルは敵わない。
彼以降のバンドで近いのはKISSではないか。特にジーン・シモンズは、
ROCKのPOP性と商業性を物凄い高みに押し上げた大天才です。
老若男女が、親子連れで、三世代でコンサートにでかけ、
みなそれなりに楽しめるというラウド/ヘヴィミュージックを、
志向し成し遂げたのがオジー・オズボーンという人物です。
ヘヴィミュージックのテクスチャーに関しては、
サバスの同僚だったトニー・アイオミ達の力が大きいのですが、
リフやトーンを迷いなく追求したオジーこそがサバスの頭脳と言ってよい。
パープルやツェッペリンなどは高齢者や好事家向けの音楽になってるが、
オジーが築き育て上げたラウド/ヘヴィは21世紀だって現役バリバリ。
インフルエンサー? いや、オルガナイザーと呼びたいなぁ。合掌。
【蛇足】
ソロ以降はロクに聴いてないんです。でも耳にすればカッコイイと感じる。
彼の音楽性はサバス初期の5枚で確立されてるというのが私の偏見。
3分前後の曲に名曲が多いという点も重要だと思う。
そうだ、彼の非キリスト教的価値観も非常に好みにあいます。
敬虔すぎるキリスト教信者から非難や攻撃を常に受けていたけど、
「神ってモンをそこまでご大層に持ち上げるなよ」と言いたかっただけだろう。
モーターヘッドのレミーだって第三帝国グッズのコレクターでした。
じゃあモーターヘッドはナチズムなの? 馬鹿馬鹿しく、議論にもならない。
道徳の罪を糾弾する哲学者は多いが、オジーだって同じことをしただけ。
グレかけた10代半ばに出会ったロックに惚れ込み、仲間を集め、
自分みたいなロクでなしでもここまで来られることを証明し、
社会で居場所を失いかけたヤツらを支えたかったんでしょう。だから好かれた。
間違いなく天国に行けただろうなぁ。最初に誰に逢いに行くかな?
ジョンレノンだろうか。ロニージェイムスディオだろうか。いや、違うな。
両親に会い、下界で成し遂げたことを報告し感謝するだろう。そういう人だ。