仕事で熊に出会う。

　仕事が辛い辛いっていうけど、仕事で危険があったりなんでこんな目にあわないといけないんだ、っていう仕事は世の中多いけれども、狩野英孝大師匠というお笑い芸人は、仕事で、仕事で、仕事で野生の熊に遭遇したという…。嫌すぎる。そんな仕事したら、私だったら「こんな事するためにお笑い芸人になったんじゃない、労基やばすぎやめてやる」ってすぐ辞めるかなって思う。それでもお笑い芸人さんってお笑いをやり通すんだな、と思うと、本当に凄い。よくよく考えたら、あまりの危険さに笑えない話なのでは…と、広告業界のブラックさというものの片鱗を垣間見せてくれるエピソードであるけれども、そんな事を「なんでもないよ」とでもいわんばかりに笑い話にしてる。そんなお笑い芸人という人間の人間離れした物凄さ。人間力。生きる姿。しれば知るほど、お笑い芸人って一番やったらダメな仕事ではないか、と、お笑い芸人の色んな労働の常識の外にある姿に、色々考えさせられたりして。

　狩野英孝大師匠も、大師匠とはいえ、お笑い芸人になったらゆくゆくは「いつか野生の熊にあう仕事とかやるだろう」って、想像してなかったと思います…。いやどうなの。想像してたのかな。凄い人は。私だったら全然想像しないと思います。仕事場に行って、仕事上、都合上、熊に出会わないといけない仕事。それがお笑い芸人か…待って、ミッションインポッシブルすぎん…？と、日本で今、一番トム・クルーズな人が狩野英孝だという事が判明した。仕事とはいえ、野生の熊に遭遇するって…下手したらどんだけな仕事で、命危険手当みたいなのを、お笑い芸人ってもらっているのでしょうか…。そういうのが、気になって仕方なかった。

トムクルーズばりに命の危険にかなり遭遇する狩野英孝大師匠

狩野英孝大師匠は、仕事で今までもありえなすぎるほどお笑いに命をかけまくっていて、まさにミッションインポッシブルをまったく嘘いつわりなく本気で体当たりしている。トム・クルーズがやったら「カッコイ」なのに、狩野英孝大師匠が命の危険に遭遇したという話が、「爆笑」というものに変換されていて…。もっとその命がけの仕事への情熱を評価するべきだと思うけれど、なぜかほんとに、命がけになればなるほど、アクシデントになればなるほど、「さすが笑いの神に愛されてる男」ってなる、ミッションインポッシブルよりカッコイイはずなのに面白いという師匠の姿に、どんだけあの人はかっこいいと正しく評価もされないのにも関わらず、ひとびとの心楽しさに自分の体と命を捧げて生きてるんだか、と、涙ぐましい大師匠の生き方にほれぼれするばかりだったのだ。命がけエピソードも好きだけど、私の好きな狩野英孝大師匠のネタは、やっぱりあの、「僕イケメン！」っていう、謎のポジティブネタです。私っていつも、やたらめったら桁外れに糸の切れたタコレベルのポジティブナルシストぶる人から目が離せなくなっちゃうんですよね。私自身も自分大好きナルシストだからですかね。

仕事で熊

にしても、仕事で「次、野生の熊にであう仕事だよ」って言われたら、どっかに仕事の辛さを訴えたくなるんじゃないか。お笑い芸人さんのエピソードはいつも面白おかしいけど、おかしいけど、その過酷さを訴える場所ってあるのだろうか。もっと体を大切にして百歳まで生きて欲しいのでほんとにいつか面白さを命よりも優先しそうな狩野英孝大師匠に親戚のお母さんみたいな気持ちにさせてもらえます。何もできないけど、まったくほんとに元気すぎるお笑い芸人さんのやらかしエピソードったら。自分なんてお笑い芸人さんの過酷さに比べたらとほんとに頭が下がる思いです。

一番嫌な死に方

　私が「自分がもし一番嫌な死に方って何かな」って考えた時、「クマに食べられて死ぬ」っていう死に方だなと思ってたんですよね。自分の最大の恐怖が、熊なんですよね。そんな恐怖がけっこう常にあるので、熊には会いたくないなと思っているので、そんな私だから凄く過敏に熊に会うという事に反応してしまうのかもしれない。一番絶対嫌だなと思う事を、仕事で仕方なくしてる時に遂げてしまったら、悔やんでも悔やみきれない…そんな私の考えられる限りの最悪なケースを想起させる、加納英孝大師匠のエピソードで、そんなエピソードを聞いて、私は、

「絶対どんなに食い詰めても、お笑い芸人にだけはなりたくない…」

という決意が、強固に頑健に、ガチっとガチガチに、私の中で固まった。